2018年07月18日

キリマンジャロに溶け込む

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アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ(5895m)はアフリカ中央部の赤道直下タンザニアにあり、その名の意味は現地スワヒリ語で
白く輝く山という意味を持つ。
頂上の端っこに氷河があり、それがその名の由来だ。
とはいえ、その最高点に立つために氷河の上を歩く場面はなく、登山道を4〜5日かけて登れば頂上に立つ事が出来る。
しかし問題は、この6000m近い標高との戦いにある。

実際、ネパールあたりの6000m峰に登る場合はアプローチも含めて2週間以上の日数を費やし、高所順応を行うのだが
キリマンジャロでは標高差1000mを毎日、登り続け 最終アタックの日も4900mの山小屋から深夜2:00に出発して頂上を往復、
さらにもう1000m下の小屋まで帰らなければならない。

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植物も絶えた砂漠地帯を歩き、最後の小屋となるキボハットを目指す。

キボハットの近くに水場はなく、ポーターたちが3〜4時間かけて担ぎ上げる。
小屋は寒く、体調不良を訴える人も多い。
しかも夕食を17時くらいに食べたら、すぐ寝て夜中の12時位に起きて、ビスケットと紅茶で朝食を済ませヘッドランプの明かりを頼りに真っ暗闇を歩きだす。

なので、アタック前夜の夕食をきちんと食べられるか、ちゃんと寝たのかが勝負の分かれ目となる。

そこで、今回の夕食は日本から持参したもちと乾燥野菜や卵などを使って僕が雑煮作る事にした。
名づけて「スペシャル宮ちゃん夕食大作戦」

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ただでさえ薄暗い厨房小屋の中は真っ黒な黒人たちの目だけが白くきょろきょろ動いて平衡感覚を失いそうになる。
「どら、どけ!今日は俺が作るから。」
黒人コックたちには野菜を切るように頼み、日本味の雑煮を仕上げて行く。
「ん〜、かつおのダシが効いてサイコーだ。これでみんなも元気になるぞ!」

そこへお客さんが、なんかの用事で呼びに来る。
僕はコックに「あとはもちを入れたらOKだ。」と言い残し、お客さんたちの部屋に行って用事を片づける。

そのあと、キッチンボーイたちが大きなお盆に乗せた雑煮を運んで来た。
実はこれはサプライズとして、お客さんたちには黙っていたのだ。
鍋のふたを開けると日本の匂いがふわ〜と立ち上り、僕は得意満面だ。

「さあーさあ、日本から持参したお雑煮を食べて、明日の頂上アタックに備えましょう!」
お客さんたちからも歓声が上がり、僕の得意顔はまさに頂点を迎える寸前だ。

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お玉ですくって、みんなのボールによそおうとしたら、あれ・・・・
もちが入ってない!
「おいコック、もちはどうした?」と僕は怒気をはらんだ顔でコックに詰めよる。

「細かく刻んで入れました。」
・・・・

鍋の前を離れた俺がバカだった。

細かく刻んだもちは全て溶けてしまい、ただのドロドロスープになってしまった。
さすがにコックたちをどやせないわ。

それでも、お客さんたちは「おいしいよ、元気でたわ」と慰めてくれる。
得意満面の頂点から奈落の底に突き落とされた気分の俺もそのドロドロ汁を飲みながら
けっこうイケるじゃん!とすでに気を取り直していた。

その後、寝たんだか、寝てないんだかわからないような数時間をシュラフの中で過ごし
お決まりのビスケットと紅茶で朝食というより、夜食を済ませて我々はキボハットをあとに頂上を目指す。

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ジャンボ、ジャンボ ブ ワナ!
ムズリ サイ!

僕らは全員が最高点のウフルピークに立つ事が出来た。

今世紀の中頃には温暖化の影響で消えてなくなると言われているキリマンジャロの氷河。
一足先に溶けて消えてしまったのは、日本から持参した佐藤の切り餅だったけど
我々の気持ちも、このアフリカの大地の頂点に溶け込んで行くのを感じた。

アフリカ、この地の水を飲んだ者は また必ずこの地に帰ってくる・・・
posted by 宮下岳夫 at 17:39| 北海道 ☔| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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